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『天冥の標1 メニー・メニー・シープ 上・下』小川一水 [読書]

西暦2803年、地球からの植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし土地を統治する臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電制限などの弾圧を加えつつあった。セナーセー市の医師カドムは、《海の一統》のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが……。シリーズ第1弾。

なんだこの面白いやつはー!と内心叫びつつも、とんでもない虚脱感に襲われて読了。お、お、面白かった…。
個人的に話が濃密そうなファンタジーSF系の長編作品はここ無意識に最近避けていた節があったので、久しぶりに手に取りました。
第1巻は世界観の説明面が強いものの、植民星に住む人や種族、そして勢力図が濃い! 出そろった人々たちが、様々な思惑や激情を孕みつつも非情な弾圧を加えている統治者に向けて戦う…話かと思ってたのに、下巻の最後で、全ての予想が(良い意味で)裏切られてしまった。こんなに出尽くして、盛り上がりきって…その後にどう話が続くんだ…?

かつて六つの勢力―【医師団】【宇宙軍】【恋人】【亡霊】【石工】【議会】それぞれの話を読んでみたいな。人体に電気を体内に取り込み海中でも呼吸できる《海の一統》たちの話とか(アクリラの風貌が、宇宙がテーマということもあって、某茅田作品に出る金髪の天使を彷彿とさせました)、個人的に石工(メイスン)たちの動向が、上下巻通してとても面白かった。古からの契約により人に支配され、考えることすら放棄してしまった種族たちの自己の尊厳の復活に至るまでの話が、熱い。

あと、小川さんの物語を読むのは本作が初めてだけど、こうも恋愛面のフラグがぼっこぼこに立ち上がってて驚いた。そして心構え持たせる間もなく絶望に叩き落すんですね…。文章も読む前からもっと硬い雰囲気かと思っていたので、随分読みやすかったなー。

今後、どんな風に話を持っていくのか非常に気になる!!! 




天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

天冥の標〈1〉―メニー・メニー・シープ〈下〉 (ハヤカワ文庫JA)

  • 作者: 小川 一水
  • 出版社/メーカー: 早川書房
  • 発売日: 2009/09/30
  • メディア: 文庫

 


タグ:小川一水
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『かくりよの宿飯 三 あやかしお宿に好敵手きました。』友麻碧 [ライトノベル]

妖が見える女子大生・葵は、ある日祖父の借金のかたに妖の世界「かくりよ」に攫われ、宿屋を営む【天神屋】の大旦那から鬼の嫁入りを迫られる。料理の腕を武器に、自ら天神屋で働き借金を返そうとするが妖たちは彼女に冷淡で…。

とんだ飯テロ&異形もののシリーズだよ! 読むと何か物を入れたいような、口寂しい気分になる。

妖と引き立つお料理の描写には、つい「妖怪アパート」を思い出してしまうけれど、主人公は女子大生かつ妖たちの棲む異世界で孤立奮闘するところから始まるので、また違った面白さがありました。味方のいない頃から着実に居場所を作っていく強かな姿とお人よしな性格、そして巻を増すごとにお料理の描写がたまらなくクセになる。

彼女のお料理に対する姿勢の背景に隠れた過去―小さいころに助けてくれた白い妖の謎や、大旦那様との糖分(こちらは結構、長期戦の気配が…)など気になる要素があるなか、今回の3巻は気になる終わりであーっっ続きが待ち遠しくって仕方ない。。過去2巻は一巻ずつ話がまとまっていて最後にはほっこり幸せな気分に浸れたので、まさかの緊張感引きでした。いよいよ白い妖について核心に触れるのか。大旦那様との恋路(になるのか…)の進みも、天神屋のメンバーとの掛け合いも、、気になる!!



 


タグ:友麻碧
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『ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と黙示録』古野まほろ [読書]

探偵養成学校・聖アリスガワ女学校春期合宿。不測の事態の末たどり着いた謎の村「鬱墓村」で起こる不可解な殺人事件に、学園屈指の探偵術を誇る三人の少女が挑む。シリーズ第3弾。

なんて面白く、残酷な合宿だろう。
ずっと興奮しっぱなしで読みふけてました。女生徒と閉鎖的な世界と謎の脅威の組み合わせは、恩田さんの長編作品を思い出したな。
断然、一作目より好みな一冊!

独自の風習が構築された「鬱墓村」。絶対的な世界で突如起きた殺戮。少女たち持ち前の才能と機転をもって手口、動機、犯人像を畳みかけるように暴いていくラストには痺れた!そして、事件を解いても尚迫りくる脅威に対し、最後まで空気の張った展開でした。

そして謎は全て消化しきったのに、感情までは整理しきれない―後を引くようなラストに心を持っていかれて…。
少女たちは、今後、根源となる勢力に抗っていけるのだろうか。。
 

ぐるりよざ殺人事件  セーラー服と黙示録 (角川文庫)

ぐるりよざ殺人事件 セーラー服と黙示録 (角川文庫)


タグ:古野まほろ
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『空と鏡界の守護者』小椋春歌 [少女小説]

術を掛け合わせる【連祷(れんとう)】で倍の力を生み出し、魔物を倒す精霊術士。精霊術士を育成する学園で、誰とも連祷することが出来ない落ちこぼれのエリルは、ある日学園一天才と称される後輩のリトと偶然連祷が成功してしまうが。シリーズ第1巻。

わ、わんこだ。…これが、わんこヒーローか!
びっくりするくらい彼が言葉を発するたびに、すべて犬が尻尾ブンブン振って「ワンワン!」と叫んでいるような幻聴が聞こえてきまして、、貴重な体験でした。眩しいくらいに一途で、好き!を隠さない年下わんこヒーローは、個人的に今まであまり読まなかったので新鮮だなー。

落ちこぼれヒロインと天才少年という組み合わせに惹かれて手に取ったものの、あくまで表面を指しているだけで、お互いの隠していた真実や、二人一組となり祝詞をもって敵と戦う設定が面白くて、一気に引き込まれた。特に戦闘シーン、歌い上げる姿が様になっていて、かっこいい。幻想的な視界が広がるような、想像がふくらむのが楽しかった。
個人的には、過保護で優しい友人たちの糖分を感じずにはいられないんですけど…主人公たちとは違った方向の面白いやり取りが垣間見れたので、次巻期待したいところ。あとヒーローの暴走気味な攻めの姿勢も楽しみ。


空と鏡界の守護者 (ビーズログ文庫)

空と鏡界の守護者 (ビーズログ文庫)


タグ:小椋春歌
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『探偵・日暮旅人の探し物』山口幸三郎 [読書]

保育士の山川陽子は、ある日保護者の迎えが遅い園児・百代灯衣を自宅まで送り届けることに。初めて対面した灯衣の’父親’日暮旅人は、ある特殊な能力を持つ探し物専門の探偵事務所を営んでいて…。
 
最近観たドラマ版(多部未華子さん目当て…)がものすーっごく好みで自分好みでわくわくして、原作があると知ってからその勢いで読みました。ドラマは実写用に改変されているところがあったけど、小説と映像と各々の分野で良さが出ていてどちらも面白かった!
 
視力以外の五感をすべて失った探偵・日暮旅人が、唯一残った視力(それも常人以上の能力)を駆使して先々で出会う人たちの「探し物」を見つけ出していく物語。読み終えるとどこか切ない気分にさせられるのは、旅人の能力上思い出を辿るような探し方だからかもしれないし、優しいけれど常に哀しい瞳を浮かべている旅人の不思議な存在に陽子先生同様惹かれてしまったのかなぁ。
 
…この記事を書いている時点で、既に本編4巻(第1シーズン最終巻)まで読み終えているのだけど、2巻からが今までの雰囲気を一変していて(旅人の過去がもう明かされているし!)、てっきり日常の謎を解き明かす短編ものかと思っていただけに驚いた。旅人の過去を知るとどうしても物語が重くなるなか、陽子先生との微妙な関係も巻を重ねるごとにやきもき!していて和みました。
 
第1シーズンの最終巻を読み終えると、まだ読みたい要素や知りたい部分がたっぷり残っているので、続く第2シーズンも楽しみです。(特に、増子警部がどんどん良いキャラしているような…雪路絡みでの彼女の活躍が気になる)
 

探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)

探偵・日暮旅人の探し物 (メディアワークス文庫)


タグ:山口幸三郎
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『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』米原万里 [読書]

1960年、プラハ。小学生のマリは個性的な友人に囲まれていた。男の見極め方を教えてくれるギリシア人のリッツァ。嘘つきでもみなに愛されているルーマニア人のアーニャ。クラス1の優等生、ユーゴスラビア人のヤスミンカ。三十年後、旧友たちを訪ねに激動の東欧に足を運んだマリは、少女時代に隠されていた彼女たちの真実を知る。

ロシア語通訳の著者がソビエト学校に通い様々な国の友人たちと過ごした少女時代を綴ったエッセイ。エッセイなのだけど、マリの友人である三人の少女のエピソードに、それぞれ臨場感あり物語を読むような感覚でした。そう、小説のような非現実な日常をマリ(著者)は過ごしたんだなぁ。なんとも言えない余韻が残る一冊で、この本を思い出すとおなかの芯のところが渦巻くような気分になります。。

民族や社会の思想って、何だろうと改めて問いかけられたような。ひとの奥底に根付くものや思想や政治的背景による対人関係を―少女の目を通してみた世界に圧倒されました。中でも表題にもなっているアーニャの話は衝撃的。自分の周りの環境によって人格はかたどられるとは思うけれど、それにしても激動する社会の中で身を置くためにはそうならざるを得なかったのか、それとも…。再会したときの著者の心境を思うと、複雑でした。

本当に読みごたえがあった!いつも読むようなジャンルとは全く異なるものだったので、新しい思想や考えに触れることも多くて、とてもおもしろい一冊!


嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)

嘘つきアーニャの真っ赤な真実 (角川文庫)


タグ:米原万里
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『ことり』小川洋子 [読書]

人間の言葉は話せないけれど、小鳥の言葉を理解し話すことが出来る兄と、兄の言葉を唯一理解できる弟。小鳥たちの声だけに耳を澄ます二人は、つつしみ深く一生を生きた。

小川洋子さんの文章は本当に美しくて、自分の中で嫌なものが取り払われて心穏やかな気分になる。

ただただ静謐で、穏やかな日常に満たされる。小川さんの作品を読むときは、独自の世界のまま陶酔させずに、目を背けたくなるようないやらしい現実も入れてくるので色んな気分にさせられるなぁ。人間の言葉を話さず、小鳥の言葉「ポーポー語」のみを話す兄と弟の生活は所謂、世間の目からすれば奇妙に映る光景で。ただそれは社会からの視点であって、二人のつつましい日常を脅かすものではない。振り返れば、兄と弟の暮らしを描いているのは本書のうち半分にも満たされていないのだけれど、とても印象に残る。

それにしても、表題がひらがなには意味が込められてたのか…。 
ひとりになった弟の暮らしを最後まで読み終えると、思わず最初の数頁を読み返して、ようやく読み終えた実感を持ちました。穏やかな余韻に浸った一冊。


ことり (朝日文庫)

ことり (朝日文庫)


タグ:小川洋子
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